ひろさちや「日本人の良識」(アスキー新書)
内容
いま、われわれ日本人に必要なのは、常識ではなく良識だ!
すべてのはじまりは1960年--食品偽装問題、官僚の汚職、政治家の失言……こんな日本に誰がした!?狂った現代日本にモノ申す。国家論にして人生論、そして人間論を説いた、今日の日本人必読の書!
担当編集者より
いま日本は、政治も経済も、教育も労働も、社会の全般が狂っています。そうした状況にあって、いま日本人にもっとも必要とされるものは、――良識――です。社会人としてまともな判断を下せる、善悪の判断ができる、その見識が良識です。わたしたちはこの地獄のような競争社会において、狂った世の中の「常識」に振り回され、多くの人が良識を失っています。
一人でも多くの人が良識を取り戻してほしい。そして、人間らしい心を持って、ぜひとも人間らしく生きてほしい。心からそう願う、著者渾身の作品です。読後にあなた自身の変化が試される、リトマス試験紙的一冊。ページをめくるたびに、ひろ氏独特の世界へ引き込まれること間違いなし! 絶対の自信をもってオススメします。老若男女問わず、ぜひ読んでいただきたいです。
目次
まえがき
T 良識と常識の違い
1 良識のない日本人
2 主体性と批判精神
3 自分の意見のない日本人
4 狼と羊の民主主義
5 「一人でも反対なら橋はかけない」
6 医療行為は人間性に対する攻撃である
7 患者を診ずに病気だけを見る西洋医学
8 病気と仲良くしよう
9 学校教育は人間性に対する侵襲行為
10 判官贔屓がフェアの精神
11 まことにおかしな「喧嘩両成敗」
U こんな日本に誰がした!?
12 終りの始まり
13 経済成長路線を走り続けた日本
14 「人はパンだけで生きるのではない」
15 貧しいことが幸福である
16 「怠ける権利」を要求すべきだ
17 庶民のあいだにあるやさしさ
18 友だち意識とお互いさま意識
19 ノルマの社会主義・競争の資本主義
20 終りの終りがやってきた
V 人間らしく生きたい
21 わが心のうちに地獄も天界もある
22 競争原理が通用する世界が地獄
23 二人に一個のパンしかないとき
24 カルネアデスの舟板(緊急避難)
25 布施とは喜んで捨てること
26 布施とはむさぼらないこと
27 仏教者の生き方
なかなか示唆に富んだ本で、読み始めて半日で一気に読み終えてしまいました。
ということで、
備忘録として内容をピックアップ。
・日本人には「主体性」が欠如している
・それは「良識」はないからだ
・良識とは主体性の判断力
・何が善であり、何が悪であるかを判断できるのが良識
・「7 患者を診ずに病気だけを見る西洋医学」から
(前略:キリスト教の考え方を紹介)
負けるためにために闘っている。
ここのところが日本人にはわからない。日本人は、闘いというのは勝つために闘うと思っている。それは読売ジャイアンツの思考である。だから、負けるために闘うキリスト教文化が理解できないのだ。わたしは阪神タイガースのファンだから、キリスト教文化が良く理解できる。最近はそうでもなくなったが、一時期のタイガースは負けるために試合をやっていたようなものだ。そのころ、わたしの作った句がある。
開幕や 残りは全部 消化試合 身毒斎
・精神の病気については、病気と闘ってはいけない。病気と闘うことは、自分自身を敵にすることである。(中略)いまの日本は、病人や弱者が生きにくい風土になってしまった。困ったものだ。
・良識のある人間は、ガツガツしない
(この話から発展して)プロ野球のドラフト制度は、アンフェアの極み。下位球団から順に選手を指名するウェーバー方式がいちばんいいのだが、金持ちの球団がそれに屁理屈をつけて、ウェーバー制にしようとしない。だから、弱い球団がますます弱くなり、金持ち球団だけが得をする。と、どっかのチームをアンファアと批判。
もっとも、タイガースもえらそうなことは言えないが、あのチームはもっとえげつないとも。。。
・フェアとは「判官びいき」ということ。弱いものの味方をするということ。
・「喧嘩両成敗」という考え方もおかしい
・1960年が終りの始まり
〜安保闘争のからみで、1960年6月17日の朝刊に「暴力を廃し議会主義を守れ」と七紙共同宣言が。この宣言のどこにも「暴力」の定義がなされていないのは、体制側の都合の良いように解釈できるための、権力への幇助ではないのか。ここから、日本はおかしくなった。
・その後、岸内閣退陣。次の池田内閣は国民の目を経済成長に向けさせ、日本人を「金の亡者」にした。
・イエスの言葉の真意は、満腹している状態そのものが不幸であるということ。よりそれ以上の満腹を求めてしまう。それが、すなわち飢えているということ。
・「忙」しいは、心が亡くなると書くし、心を亡くすと縦に書けば「忘」れる。いずれにしても、心を失っている。
・「お互い様意識」があるから、人にやさしく出来る。拝金主義者の思想では、人間はやさしくなれない。社会が豊かになれば、その社会には拝金主義者がはこびる。
・資本主義と社会主義との対立で資本主義が生き残ったのは、資本主義では軍事に金をかけることが、経済成長につながったからだけのことで、思想そのものが優れていたということの実証ではない。
・地獄とは、敗者が屈辱に生きなければいけない社会である。日本の社会はそのような地獄になっている。良識のある社会では、競争が行われても、敗者が傷つかないシステムになっている。
・プロセスを変える(ほとけさまを介する)ことによって、結果は同じでも宗教の教えを日常生活で実践できる。
・布施/愛語(慈愛の言葉・相手を絶対肯定する)/利行(他人の利益になるよう行動する)/同事(相手の立場を理解し、協力すること)
著者
ひろさちや
1936年大阪府生まれ。東京大学文学部印度哲学科を卒業後、同大学院博士課程を修了。気象大学校で20年間教壇に立つ。仏教を中心に宗教をわかりやすく説き、若者から老人まで多くのファンを獲得。著書は『お念仏とは何か』(新潮選書)、『「狂い」のすすめ』(集英社新書)、『「デタラメ思考」で幸せになる!』(ヴィレッジブックス)、『無責任のすすめ』(ソフトバンク新書)など500冊を超える。