・池上 彰「大衝突」(集英社)
池上彰、5つの対決軸で斬る、混沌の現代世界!
アメリカ・中国・ロシア・EU・サウジアラビア、そして日本。激動する世界のなかで、繁栄と生き残りをかけて激突する巨大国群の衝突の行方を、気鋭のジャーナリストが斬る!
参考文献の紹介までだと全部で397ページもある分厚い本ですが、内容は読みやすくまとめられているので、そんなに時間が掛からずに読了できました。
これを読めば、現時点での国際情勢がわかります。ただし、この本を校了した時点(第1刷発行が2008年9月なので、遅くとも8月初め頃)では、昨今の金融・経済情勢がここまでマイナス方向に激変するとか、その影響と投機マネーが逃げて、第1次産品価格がここまで下落するとは思ってもいなかったでしょうね。
以下、章ごとにピックアップします。
【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 中国vs.アメリカ「太平洋をめぐる対決」
(現時点では)中国の経済構造は、効率性が低く、エネルギー大量消費型。そのためのエネルギー確保に血眼になっている。/「人権より資源」/アジア諸国を経済的に「朝貢国」に(特にインドシナ半島)/アメリカに中国脅威論/米中両国共通の利害が日本と戦うことだった時代(1930年代から1945年まで)もあることを忘れてはならない/中国の発展を楽観視することはできないし、アメリカの潜在力も依然として非常に大きい
第2章 ロシアvs.アメリカ・EU「異質な国との対決」
ロシアは資源国の強みで、石油価格高騰とともに経済力を回復/プーチンは、経済は市場経済派のエコノミストを登用しながら、自分の側近はKGB出身者で固めた/同時に国民との直接対話も/運良く石油価格も高騰してきた/しかし、政治面では強硬路線を継続/外貨収入の大半がエネルギー輸出によるもの。(ここ最近のエネルギー価格下落傾向では、それを補完する産業はまだない)/収入の二極化が問題に。そのため多くの貧しい男性が酒に溺れ、医療状態も良くないので、男性の平均寿命が縮まっている。人口も減少している
第3章 EUvs.アメリカ「グローバルスタンダードをめぐる対決」
国家が持っていた主権の一部をより上位機構(EU)に譲り渡すということは、戦争に負ける以外に過去にほとんど例がない/EU全体の経済規模はすでにアメリカに超えている/EUとしてまとまった方が国際社会での発言力も強くなる/独占状態是正を図るEUとマイクロソフトとの対立/環境規制も厳しい/アメリカにはEUや日本にあるような国民皆保険制度はない/日本がめざすグローバル化は自己責任型のアメリカ型ではなく、ある程度政府が面倒を見るEU型のどっちがいいか/巨大なEUに対する不安感はあるもののそれでもEU統合は進む/(イスラム圏ともいえる)トルコのEUに加盟にはまだまだ反対が多い
第4章 サウジアラビアvs.アメリカ「中東への影響力をめぐる対決」
サウジがドル資産をユーロに切り替えるかが問題/サウジ&米国関係は基本的は良好だが、国際情勢は一寸先が闇
第5章 中国vs.日本「アジアの覇者を掛けた対決」
中国製食品の安全性問題では中国人も被害者(廃油の使用・国内より輸出向けの安全基準が厳しいなど)/現在の日中は食品の輸出入で互恵関係にある。中国が日本に食料を売らなくなったら日本はどうすればいいのか
結び 新たに生まれている対立
アメリカ対イスラム/アメリカの新しい(オバマ)政権下でのアジア政策はどうなるか/日本にとって最良の方針を取るよう働きかけることも必要/日本は韓国、中国、ロシアとの関係改善が必要。したたかになれ
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内容(「BOOK」データベースより)
衰退しつつあると見られる一方で、依然として巨大な潜在能力を秘めるアメリカ。昇竜のように発展を続ける21世紀の超大国・中国。軍事力と豊富なエネルギー資源を武器に復活を遂げた、謎だらけの大国・ロシア。日本人の気づかないところで、すでにアメリカ以上の実力を蓄えたEU。膨大な量の原油を支配下に置き、今や中東の盟主ともなったサウジアラビア。そして、必死に生き残りへの道を模索する、アジアのリーダー・日本。世界を掛けて激突する巨大国家群の衝突の行方を、気鋭のジャーナリスト池上彰が斬る。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
池上 彰
ジャーナリスト。1950年長野県松本市生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。報道記者として、松江放送局、呉通信部を経て、報道局社会部へ。警察庁、文部省、宮内庁などを担当する。その後、首都圏向けニュース番組のキャスターを5年間務め、1994年から2005年まで『週刊こどもニュース』を進行するお父さん役に携わる。2005年、NHKを退社。現在はフリージャーナリストとして活躍中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)