・田母神俊雄「自らの身は顧(かえり)みず」(WAC出版)
アパ論文が原因となり、退職に追い込まれた田母神前航空幕僚長。一自衛官を葬り去ることで幕引きを図った政府が、議論を避けたがった田母神論文の真意とはどこにあるのか――?
「誰が『悪い国』を命を懸けて守ろうとするだろうか、国を愛することを禁じるような歴史観のままでは、日本はいずれ滅びる」という本書の言葉の通り、“歴史認識と安全保障の問題”こそ、田母神氏が最も訴えたかった事と言える。
日本の国家再生には、歴史観の転換が必要であり、歴史認識こそ、日本の安全保障を決める!
Amazonのカスタマーレビューやmixiのレビューでも著者に好意的な意見が多かったですね。
自分も、「自虐主観」の歴史認識を快く思っていない立場なので、おおむね著者の主張に同意しますが、件の論文についてはなんでアパがこういうのを主催しているの?という疑問点と、この論文って渡部昇一本に書いてある内容とかぶるような・・・
もっとも、アパ論文の審査員に渡部昇一さんがいるんですね。
いずれにせよ、この本にも引用されている
・「戦後50周年の終戦記念日にあたって」(いわゆる村山談話)<平成7年8月15日:外務省HPから全文はこちら>
・慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話<平成5年8月4日・:外務省HPから全文はこちら>
・日本は侵略国家であったのか 田母神俊雄(防衛省航空幕僚長 空将)<アパHPから全文はこちら(PDF)>
を読み比べて、どれが納得できる内容かどうか自分自身で判断してみてください。
ともあれ、田母神氏のユーモアセンスの高さはうかがえますね。
以下、内容の一部ピックアップ
プロローグ
・私は端的に言って「日本はいい国だった」と言って(「政府見解では悪い国になっている」という見解の相違で)航空幕僚長を解任された。
・自分が解任されたことで、日本では文民統制(シビリアンコントロール)が効いていることを証明
・「日本は悪い国だ」「侵略国家だ」という占領軍によるマインドコントロールは払拭されることなく今日に至ってしまっている
・このままでは国が滅びる
第1章 歴史を捻じ曲げる政治の責任
・歴史を見る2つの立場
1.この国を断罪する立場で歴史を見る
2.この国に深い愛情を持ってみる
日本の歴史教育は前者のみで、これでは日本人が自信を失う
・東大五月祭で歴史講義
「戦前の日本軍は悪かったのか、そうでなかったのか実際どうだったのか、両方の説を知って、どちらが本当か判断してほしい」
・海外でも日本の立場を代弁
〜国益を損なうと思うことについては日本の立場をはっきり主張しなければならない
第2章 国会に参考人として招致されて
・村山談話の「わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。」について、国策を誤ったのはいつの時期なのか?どの地域なのか?という具体性に乏しいと指摘
・歴史はそれを学ぶことで国民に誇りをもってもらうということが世界の常識
・シビリアンコントロールについての著者の解釈は、国防・安全保障の問題で、軍事力で解決するのか、非軍事的手段で解決するのか、その最終決定権を政府が握っていること
・自衛隊のイラク派遣反対を表明し、小泉政権を直接批判した(当時の)防衛大学校校長は、まったく問題にされなかった
第3章 「日本は悪くない」
・戦前の中国大陸への日本軍駐留は条約に基づいている
・日本軍は、世界でも有数の軍紀厳正な軍隊だった
〜北清事変の際、日本軍の駐留地域が一番治安が安定していた。もっとも悪かったのがロシア軍駐留地域
・世界中で(日本は悪い国だとの)情報工作を仕掛ける中国
・無実の罪を着せられてきた日本
・戦争の悲惨さを教えるといいながら、日本軍の極悪非道ぶりのみを強調するような歴史教育内容では、自国を嫌いになってもやむをえまい
第4章 不磨の大典となった「村山談話」
・日本はアジア独立の母、人種差別の撤廃を最初に訴えた
・魂を失っては繁栄は長続きするはずがない。歴史を抹殺してしまえば、日本という国は衰退するだけである。パソコンや自動車は壊れたらまた買えばいいが、一度完全に失われた歴史は二度と取り返すことができないかもしれない。
・中国に一歩譲れば、次にはさらに譲らなければならなくなる。
〜1980年代の教科書問題、靖国神社参拝取りやめ以降
・英国も自虐史観に悩んでいたが、サッチャーが教育改革を行い、自国への誇りを取り戻した
・米国では「ベトナム戦争」の後遺症で、国家に対する信頼が薄れ、家庭も学校も崩壊状態にあったが、レーガン政権下で教育改革を行い、立ち直った
・日本人はかつて美しかった
第5章 日本の防衛体制のお粗末さ
・部下にもニックネームで呼ばれた
・部下が一生懸命やったことをできが悪いからと言って感情に任せて怒ったことはない。怒れば部下が委縮するだけだから
・もともと落語や漫才が好き
・父親が左翼化を心配して防衛大に行けと
・部下が心から敬意を払うのは最後まで部下を守ってくれる指揮官であり、そのような信頼感を受けた指揮官を中心とした軍は最強
・ダッカ事件(福田赳夫首相(当時)が「人命は地球より重い」と述べて、身代金の支払い及び、超法規的措置としてメンバーなどの引き渡しを決断。)後に日本人拉致が急増〜日本は決して反撃してこないと北朝鮮になめられた
・海外諸国の軍隊は禁止されていないことは何でもやれるが、日本の自衛隊は法律に規定のないものはやれなくなっている。これでは有事に間に合わない
・(空自の敵地攻撃能力の現状など)議論くらいはさせてもいいのでは
・反日的言論の自由があるのに、親日的言論の自由は極めて制限されている
・国際関係は性悪説が前提
第6章 精強な自衛隊をどうつくるか
・攻撃は最大の防御
・ニュークリアシェアリング(核分担:米国が戦時には核を保有しない同盟国に核兵器を提供する仕組みで)も検討すべき
・第二の戦場(マスコミや政治の世界での戦場)でも自衛隊は強くなければいけない。軍事組織なのだから、外部から自衛隊に接近、あるいは妨害活動をする人間を調べるのは当然
著者紹介:田母神 俊雄 (タモガミ トシオ)
1948年、福島県生まれ。67年防衛大学校入学。71年、防衛大学校(第15期)電気工学科卒、航空自衛隊入隊。若い時分はナイキ(地対空ミサイル)部隊で勤務、その後航空幕僚監部厚生課長、南西航空混成団司令部幕僚長、第六航空団司令、航空幕僚監部装備部長、統合幕僚学校長、航空総隊司令官を経て、2007年3月航空幕僚長。2008年11月定年退官
・【書評】『自らの身は顧みず』田母神俊雄著(MSN産経)