佐藤 優「国家の謀略」(小学館)
“異能の外交官”が明かす諜報戦争の舞台裏
「外務省のラスプーチン」と呼ばれ、対ロシア外交にその異能ぶりを発揮した外交官・佐藤優氏による『SAPIO』の人気連載「インテリジェンス・データベース」の単行本化です。「国策捜査」の存在を日本中に知らしめたベストセラー『国家の罠』は10万部を突破し、『自壊する帝国』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した佐藤氏が、初めてインテリジェンス(情報・諜報)について解説する“指南書”となっています。世界のインテリジェンス哲学から、ビジネスにも応用できるインテリジェンスの技法、はたまた激動する世界情勢の分析まで紹介。最前線の外交現場で経験したエピソードもふんだんに盛り込んでおり、著者の“外交秘史”としても楽しめます。
昨日書いた井沢元彦「中国 地球人類の難題」の読書感想文は
、読みながらメモを取り、そのメモを書き起こした形で仕上げてしまったため、何を言いたいのかがわかりにくいエントリーになってしまいましたが、この本については後でチェックすべきポイントにメモ用紙をちぎって付箋代わりにするだけでメモは取らずに感想文を書いてみました。
気になった内容を目次にしたがって書いてみると
(注:>が付箋をつけた点、←以降は自分のつっこみ)
1 インテリジェンスという名のゲーム
(「情報大国」日本はどこへ行ったのか、「ヒュミントVSエリント」論争の落とし穴 ほか)
>池田徳眞が看破した独・米・英インテリジェンス文化の特徴
(論理派のドイツ:報道派のアメリカ:謀略派のイギリス)
>国家の忠誠心が高くても”理想主義者”は諜報機関に不適格
2 ニッポン・インテリジェンスの潜在能力
(ガードの堅いエリツィン側近の胸襟を一発で開かせた「猪木カード」、外務省「対外情報機能強化」案に欠けている「プロの常識」 ほか)
>上海総領事館電信官の「戦士」を「無駄死に」終わらせるな
>遺書は「最期の報告書」として公開せよ
>「自己申告すれば免責」が被害防止の国際スタンダード
>「しかし内部調査で情報漏えいが判明した場合は厳罰」
>日本にも南北朝時代の吉野の山伏、戦国時代の忍者、戦前の陸軍中野学校の(インテリジェンス能力の高さを示す)伝統がある
3 陸軍中野学校という最強インテリジェンス機関
(「酒」「カネ」「セックス」を超える日本的謀略の精髄「愛と誠」、「生きて虜囚の辱めをうけず」の正反対をいく情報屋の「死生観」 ほか)
>「酒」と「セックス」にしても人間の欲望には限界がある
>しかし、「カネ」については限界がない←守屋夫妻の件で至極納得
>現状においてインテリジェンス能力の高い国は、
>1位:イギリス、2位:イスラエル、3位:ロシア
>戦前なら、1位:イギリス、2位:ソ連、3位:日本
>ある国家のインテリジェンス能力が当該国の国力から極端に乖離することはない
>のだが、アメリカや日本は国力と比較して低い。
>でも、アメリカは軍事力でそれを補える
>ドイツ人は頭が良すぎて、論理性を重視しすぎで、心理的に訴える手法がとれない。
4 ワールド・インテリジェンス―世界情勢を読む
(アメリカ1 マキャベリがすでに喝破していた米「国家情報長官」新設の落とし穴、アメリカ2 ウォーターゲート事件「稚拙な接触」に仕掛けられた「壮大な罠」 ほか)
>ロシアのプーチンは、過去の古典文学とそれに付随するさまざまな思想を復興させ、過去から学ぶ姿勢を国民に植えつけさせようとしているだろう。(いわゆる「復古維新」)
>過去に、日本が本格的改革を行うときには過去のモデルを求めるのと同様に。
>イスラエルではゲーム好きニートを活用した「無人機爆撃」作戦が実行されている。
>戦争の惨劇といったリアリティを感じさせず、ゲーム感覚で戦争を遂行される危険性大
>北朝鮮のインテリジェンス能力は、明らかに過大評価されている
>「弱者の恫喝」と後知恵の合わせ技が得意
>義理を欠き、人情を欠き、人前で恥をかいても平気な営業マンのようなもの
>誰もが本気で付き合わず、友達もできない
>日本では宗教が過剰になっていて、宗教観の差異に鈍感になってしまう。
5 今日から使えるインテリジェンスのテクニック
(ネット時代でもインテリジェンスのプロが「新聞切り抜き」にこだわるわけ、「エルメスのネクタイ1本」の贈り物には「2本買って」誕生日プレゼント ほか)
>橋本元首相はエリツィンの健康不安について、サミットの後の晩餐会であまり食事が進まなかったことで見破っている
←その情報感覚があるなら、なんで中国人女スパイにひっかかるかな?
>なんだかんだいっても、現在自分の取り組んでいる仕事を一所懸命に行うことが誠心
>それができれば、インテリジェンス技法は自然と身につく。
>と締めくくってます。
【所感】
大変勉強になりました。
実体験に裏付けられたものは読み応えがあって、説得力もありますね。
雑誌(SAPIO)の連載を単行本化したものですが、それにあたり各章ごとに総括があるので、時間のない方はそこだけ読んでも十分だと思います。
実際、自分も図書館で借りてきた本の返却期限の関係で熟読しませんでしたので(爆)
で、この作者は「国家の謀略」にはめられて、タイーホされ、有罪判決を受けたと。。。(現在上告中)
【ご参考:この本についての所感が書かれているブログエントリー】
・佐藤優『国家の罠』新潮社(見物人の論理)
・「国家の謀略(佐藤優著/小学館)」(調査員の「目」)